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「絢音ちゃん」
不意に名前を呼ばれて、心だけがあの日の夜に戻っていた事に気がついた。いつの間にか、緑道を抜ける最後の外灯の下まで来ていた。
「今度の土曜日って何か予定ある?」
「ないです」
「良かった。大学のサークルのメンバーで花見するんだけど絢音ちゃんも来ないかな?」
「えっ、私、いいんですか?」
「もちろん。みんな絢音ちゃんに会いたがってるんだよ」
俊希が所属しているのは演劇サークルで、絢音は何度か俊希達の演劇を観に行った事があった。
終わった後、俊希に連れられて楽屋まで入れてもらっていたので、演劇サークルの人達とは知らない仲ではなかった。とはいえ、簡単な感想とお礼を述べて、雑談もそこそこにいつも帰ってしまうから、深い仲という程でもない。
「嫌だったら無理しなくていいからね」
断る理由も特に見当たらず、絢音は俊希の誘いを受ける事にした。
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