外灯と桜の木

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 先日の大雨の影響で桜は満開を待たず、すでに散っている木もあった。  それでも土曜の昼間という事もあってか、花見スポットとして地元で愛されている雛野川公園にはそこかしこでシートやテントを用意して思い思いに楽しんでいる姿が見受けられた。  集まったのは十人程度だったが、その中に初めて見る人はいなかった。  演劇サークルのメンバーは、花見というよりもこの集まり、もしくは酒目当てがほとんどらしく、桜の見栄えを重要視したとはおよそ思えない場所に陣取り、各々持ってきたシートを広げたり、小さな椅子を置いたり、ファーストフード店で買ってきたポテトやチキンやお菓子を並べていた。  絢音が何かを手伝おうとすると、絢音ちゃんは座ってて、とお客様扱いされてしまって、その気遣いがほんの少しだけもどかしかった。  クーラーボックスから、酒の缶を取り出して、乾杯の準備をする。絢音にだけジュースが手渡され、自分の分も準備してくれていたのが嬉しかった。  アルコールが入ると、絢音を気遣っていたメンバーも徐々に打ち解け、絢音は絢音で、アルコールこそ入っていないが、この楽し気な雰囲気に酔っていた。  時折り拭く強い風に、花びらがひらひらと舞っていて、その時ばかりは皆が首を上げながらその様子に見入っている。
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