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安西社長には‘もしも’と尋ねただけなので、もちろんきちんとお願いをしなくてはいけない。先日お会いしたばかりで申し訳なく思ったけれど、仕事のことで近々お会いしたいとメッセージを入れた。返信は3日間の夫の出張中に頂いて、1週間後に事務所で会うことになった。
「1週間後に安西社長と会って、お仕事の話を聞いてくるね」
「真湖の思うように仕事をさせてもらえれたらいいな」
「うん」
「うちは、今週いっぱいで秘書が辞めるんだ」
「…ぇ?」
あの時々うちにいる夫に電話してきている秘書が辞める?
「今日の出張も一緒だったでしょ?」
「一緒だったよ」
「急に?」
「正確には、彼女には総務課に戻ってもらう」
「どうして?」
「2年になるしね。ずいぶん仕事が出来るようになったから、後輩を指導しながらの業務に就いてもらうよ」
会社全体の業務詳細を把握して、社長自ら社員教育をしているかのような言葉は、元秘書の言葉と正反対だ。出張から戻ってお気に入りのソファーで寛ぎながらブランデーをロックでゆっくりと飲む彼に
「ずいぶん前に…秘書さんだった方のおっしゃったこと…」
様子を窺うように聞いてみる。
「何?…ああ、まだ気にしてるのか?こんなに真湖を悩ませるなんて悪い女だね…名前も忘れたけれど」
「え?うそ…それはないでしょ?」
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