お健やかで…

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お健やかで…

若君様…私はお先に参ります。 あなた様はどうぞいつまでもお健やかに… どうか、 私が自ら身を投げたことに お気づきになりませぬように… 父上様がこれで 若君様のお命を狙うことを 諦めてくださいますように… …毒が回ってきて苦しい… 涙がとめどもなく溢れ、 頬を流れ落ちる。 …何を泣くことがあろう …若君様をお守りするために 身を投げるのよ… こんな喜ばしいことはないんだわ… なのに、涙が止まらない… 気づいて欲しい… でも、ダメ… 気付かないで… 若君様は優しいお方。 愚かにも、 足を滑らせた私のためにでも 泣いてくださるはず。 私はそれだけで満足でございます。 …ああ…どうして天は、 私を若君様の隣に いさせてくださらないのだろうか。 父上様、姉上様、 お恨み申し上げます。 さようなら、若君様。 たとえこの身は亡びようとも、 想いは留まり… 永遠に、あなたを愛します… 芙蓉は池に身を投げた…
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