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美沙希は、振り向きざまに瞬時にしゃがんで背後の人物の膝に抱きついて躓かせようと試みた。
転びはせずとも少しよろけた相手は、大した武器は持っていないようである。しかし、なぜかハンカチを右手に持っている。毒物を仕込んであるかもしれない。
眠らされて、どこかへ連れていかれるかも。
そしたら、諒弥君に会えない。それは、死んでも避けなければならない。美沙希は、必死だった。
「殺すならば、諒弥君に会えた後にしてくれ」と美沙希は本気で、そう思った。
相手と目を合わせる前に美沙希は、彼の脛を思いっきり蹴った。「いって」と苦しい声を出し、相手は脛を庇うようにしゃがみこむ。
このまま逃げても良かったが、諒弥くんに会えないかもしれない危機にひどく頭を支配されていたので、それだけでは済まなかった。
ここで逃がすと、デート中に襲ってきて二人の時間を台無しにされるかもしれないと美沙希は、本気で心配した。
好きな男のことになると、正気でなくなるのが玉に瑕な美沙希である。
脛を庇う相手が持っている毒付きであろうハンカチを奪いとり、羽交い締めにして彼の口をハンカチで覆った。
案の定、彼はそのまま気を失った。最初の数十秒は、抵抗していたが毒が効いてくると次第に力を失っていった。
気を失った彼をこのままにして、去っても良かった。まだ、待ち合わせの時間までは結構な余裕がある。
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