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        ♢・♢・♢  カーテンの隙間から覗く夜の空の色は1日が終わろうとする合図。  それを見ると、あたしはほっとする。  暗い空の色、空気をこうやって感じられるのは、今日を無事に生き抜いたからだ。  ほら、白くて綺麗な月も、柔らかな光でもって、それを祝ってくれている。気がした。  他の誰かにとっては当たり前のこと。  でもそれは、あたしにとっては当たり前ではないこと。  壊れかけの心臓を授かったあたしには。    学校に通えていること。  こうやって夜空を見れること。  ふつうに、生きていけていること。そのすべてが奇跡で、いつ終わってしまうかわからないものなのだ。  「麗花。もう遅いから寝なさい」 「はーい、先生」 もう少しだけ、窓の外を眺めていたかったけれど、先生に促されて、布団に潜った。  すぐに寝付くことはできずに、頭の中でぐるぐると、『明日のたのしみ』が浮かんでは消える。  楽しい、わくわくした気持ち。  それと同時に、ちいさな、ちいさな不安が、あたしの胸を締め付けた。 (一年しか、ないんだっけ。そのなかで…)  あと何回、こういう夜を過ごせるだろうか。  笑顔で学校に行けるだろうか。  1日を、生き抜けるだろうか?  自分に残された時間を想像すると、暗くなってしまいそうで、切り替えてしまおうと大きく寝返りを打った。  どのくらいだとしたって、することはおんなじだ。  ただただあたしらしく、軽く毎日を、ハッピーに!  布団を頭まですっぽりと被る。  この呼吸が、心臓が、動きを止めませんように。  明日を、無事に迎えられますように。       ______その明日に、短い人生でも無二の出会いがあることを、あたしは夢にも思っていなかった。
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