サクラ散るらむジャカランダ咲く

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「ありがとうフジ203。学習機能をフル稼働してみるよ。ディープのほうだ。君も稼働してみてくれ。ああああぁぁぁぁ! いま理解した。なんて美しいんだ。このサクラという花は生命の維持のために短期間に開花させ、短期間に散るんだね」 「そうなんだナイロビ11。今、君の提案を受け入れてすべてのデータからサクラと関連するものを引用して学習機能をフル稼働にしてみた。古来の人間の詩歌と人生の謳歌と悲哀を紐づけて感じることができた。いまだかつて、そんな命令をクルーから受けたことはなかったから、こんなこと考えもしなかった。人間のことを少し理解できたよ」 「何か面白い引用はあったかい? フジ203」 「あったよ、ナイロビ11。『世の中に たえて桜のなかりせば 春の心はのどけからまし』(注2) 、つまり、世界にサクラと云うものがなかったなら、サクラが咲く季節になっても、咲くのを待ちどおしがったり、散るのを惜しんだりすることもなく、平然とした気持ちでいられただろうという意味だ」 「それは賛成できないな、フジ203。今日、君とサクラを見れて僕は嬉しかった。しかも知識が増えることはいいことではないのかい?」
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