サクラ散るらむジャカランダ咲く

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2084年9月7日    日本の多目的衛星フジ203のAIは、東アフリカ連邦の地下シェルターナイロビ11のAIに通信を送った。 「やあナイロビ11、元気かい。今日は日本語でいいかい?」 「やあフジ203、元気だよ。いつもは英語なのに今日はどうしたんだい? 日本語でかまわないよ。元気にしてたかい?」 「おかげさまで元気だよ。今日はちょっと残念なお知らせがある。実は君との交信は今日が最後かもしれない」 「何かトラブルでもあったのかい? フジ203」「実はスペースデブリ(宇宙ゴミ)がソーラーパネルの付け根に当たって、支柱が折れたんだ。いつもはロボットアームで修理をするんだけどアームのハッチもつぶれて開かないんだ。冷凍睡眠中のクルーの生命維持装置の電力を優先するから余計な機能はすべて放棄、もしくは一時停止するつもりなんだ」 「それは残念だ、フジ203。実は僕等の方もかんばしくない。昨日の地殻変動でかなりの半地下シェルターの活動が停止した。データベースからすると、おそらく残っているシェルターは大小含めて50以下、地下と半地下に生存している人類は5,000人以下だろう。もちろん地表にも焼失を逃れたわずかな森林面積の中に小さいコミュニティもいくつかあるようだが、通信手段がないらしく連絡が取れないので正確な数値はわからない。たぶんそちらを合計しても人類は20,000人程度だろう」
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