サクラ散るらむジャカランダ咲く

「今、僕のカメラで上空400㎞からライブで見る地表は赤茶けた砂漠ばかり、海上の雲はハリケーンばかりだ。それほど変化はないよ、ナイロビ11」

「了解した、フジ203。僕は人類が生存している間に地表の生態系が復興する可能性はほぼないとみている。地中は意外に地震等の地殻変動に弱い。あと数十年ですべてのシェルターは活動停止するだろう。データはいつ宇宙に放出するんだい？　フジ203」

「君との通信を絶ったらカプセルに載せて発射させる。電波でも送るつもりだが宇宙で他の生命体にデータがキャッチされる可能性は極めて低いだろう。ところでこのデータにあるこの生態系は何というんだい？　ナイロビ11。これだけはクルーの描いたペイントと解説まである。植物で淡い紫色の花が木いっぱいに咲いている」

「ジャカランダというんだ、フジ203。ナオミはいつもこの花の絵を描いていた。ノウズンカズラ科キリモドキ属だ。実は僕の名の由来は東アフリカに位置するケニアと呼ばれた国の首都の名前なんだ。そこでは九月にこのジャカランダの花が開花する」