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「それでは、契約を今後ご継続できないとお考えですね?」
サルガッソー氏は、妻の顔を見てうなずいた。
「契約の破棄は可能です。クローンの作成と20週の培養の経費を差し引きまして、50万ドル返金いたしますが、よろしいですか?」
「ああ、かまわん。それだけでも返してもらえるならありがたいことだ。親父は確かに偉大だった。一代でこの会社を作り上げたのだから。だが、そもそもこれは会社の金で親父の金ではない。ワンマン経営者は会社と個人の区別がつかないのだ」
研究員はアタッシュケースから契約書を取り出し、サルガッソー氏はサインをした。
研究員がボタンを押すと、アクリル板が開いた。
研究員はアタッシュケースからハンマーを取り出し、サルガッソー氏に手渡した。
「これで培養器のケースを割れば、クローンの生命維持は不可能になります」
サルガッソー氏はハンマーを手に取ったが、すぐには振り下ろすことができなかった。
「あなた・・・」
妻に促され、躊躇していたサルガッソー氏の手が振り下ろされた。
卵型のケースが割れ、中から漿液性の内容液が溢れた。
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