僕は相棒の居場所を探し始める

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僕は相棒の居場所を探し始める

「なんということだ、杏沙が不確定時空に……怖れていたことが起きてしまった」  僕からひと通りいきさつを聞いた七森博士は、携帯の向こうで苦し気に呻いた。 「すみません、僕がしっかりしていれば……」 「いや君のせいなどではないし、起きてしまったことは仕方がない。それより杏沙の様子はどうだ。生きてはいるのだろう?」 「たぶん……息はしてますが、目を覚まさないんです」 「おそらく意識が別の時空に連れ去られてしまったのだろう。このままでは生ける人形でしかない」 「僕はどうしたらいいんですか?」 「とりあえず、四家君をそちらに向かわせる。二人で協力して杏沙の身体を車に乗せて欲しい」 「わかりました」 「それと……もし差し支えなかったら、君も研究所の方に来てはもらえないだろうか」 「僕がですか?」  僕は突然の申し出に思わず、携帯に向かって「行きます」と頷いていた。 「うむ。君は杏沙と同じ経験をしている唯一の人間だ。できたら一緒に娘を助けだす方法を考えて欲しい」 「もちろん、僕にできることがあれば……」  僕は一も二もなく返事をしたが、じゃあ今の僕に何ができるかというと悲しいことにできることは何もないのだった。 「もし杏沙が別の時空から何らかの形でメッセージを送ってくるようなことがあれば、それは私にではなく君に向けてだろう。真咲君、すまないが私に力を貸して欲しい」 「もちろんです、協力させて下さい」 「ありがとう真咲君。詳しいことはまたあとで相談しよう」  僕が七森博士との通話を終え、横たえた杏沙の傍で四家さんの車を待っていると子犬を連れていた老婦人が歩み寄って来るのが見えた。 「あの……そちらのお嬢さん、どうなさったんです?」 「あ、大丈夫です。ちょっと気分が悪くなっただけで……」 「……これ、なぜか私にかけてくれた物だけど、お返しします。これをかけられた時、おかしな幻がすっと消えました。きっと何かの御守りなのでしょう」  老婦人はそう言うと僕に杏沙のネックレス――たぶん何かの装置だ――を手渡した。 「それじゃ私はこれで……ありがとうございました」  老婦人は僕と杏沙に一礼すると、遊歩道の向こうに子犬と去って行った。
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