僕は冬が来る前に彼女を見つける

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僕は冬が来る前に彼女を見つける

「――四家さん!」 「久しぶりね真咲君。まさかこんな形で会うとは思わなかったわ」  長めのボブカットに大きな眼鏡の四家さんは、見慣れたバンから降りて僕を見るなりそう言った。 「すみません、僕がもっと早く異変に気づいていれば……」 「それは無理という物よ真咲君。不確定時空は突然、出現する物だし巻きこまれた人を助けるなんて私でもできないわ」  四家さんは横たわっている杏沙の傍らに立つと、「なるほど、これは完全に意識を抜かれているわね」と言った。 「このままの状態で、意識が戻るのを待つってことになるんでしょうか」 「うーん、まあ一週間くらいは大丈夫かな」 「一週間? ……どういう意味です?」 「言葉通りの意味よ。杏沙さんと同じように意識を抜かれた人に関するデータがあるの」 「データって、何のデータです?」 「肉体の平均余命よ。抜け殻になった身体が生命を維持できる限界が大体、一週間なの」 「そんな……」  僕は頭をハンマーで殴られたような衝撃を受けた。じゃあ、一週間以内に杏沙の意識を見つけ出さないとこの身体は死ぬって事? 「とにかく、杏沙さんを研究室に運びましょう。意識が無くても生命を維持できるようセッティングした看護ベッドがあるの。そこにいれば博士も常時様子を見ることができるわ」  ああ、なんてことだろう。僕はやりきれなさを通り越して絶望的な気分になっていた。  僕は四家さんと協力して杏沙の身体を担ぎ上げた。意識のない杏沙の頭が僕のお腹に当たった瞬間、ぼくはどうしようもなく涙がこみ上げてくるのを覚えた。 「真咲君も一緒に、博士の研究室に行ってくれるのよね?」 「…………」  僕は無言で頷くと、バンの狭い後部座席に杏沙と一緒に乗り込んだ。人形のようにぴくりとも動かずシートにもたれている杏沙は、今までとは全く違う意味で近くて遠い存在だった。  ――七森。僕はこの一週間、人生のすべてをかけて君の居場所を探すつもりだ。  僕は杏沙の「あなたにできるの?」という顔を思い浮かべながら、そうさ、一人でも戦える。たとえ相手が侵略者じゃなく、運命っていう弱点すらない怪物であったとしても。
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