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「まず、警備会社のサーバーをハッキングして、アリバイが必要な当日の防犯カメラ映像を入手しました。その写真は、それを印刷したものです。そして、その写真に写っている女性には、入れ替わることの了承を取っています。その服も、女性から直接買い取りましたから、写真と全く同じものです」
芽衣の心臓は、激しく脈打っていた。フラグの指をどけようと思えばどけられたけど、そのまま口を開く。
「な、なんで、そ、そんな……そんなことが、出来るんですか?」
「アリバイ屋をなめちゃだめですよ。芽衣さん」
フラグは、唇に当てていた人差し指を、さらにぐいっと、押し込んできた。
芽衣は、顔が火照ってきて、さすがにフラグの指から、顔を避けた。
(乙女の唇を、なんだと心得てるの? デリカシーの欠片も無い……まったく)
フラグは、動物よりも先に、人間同士のコミュニケーションの方に関心を持って、自身の言動が異質であることを自覚しないといけない。
そんな説教をしたくなる衝動を抑えて、芽衣は、服の詰まった袋を持って立ち上がった。
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