1.アリバイ作り

11/35
前へ
/359ページ
次へ
「まず、警備会社のサーバーをハッキングして、アリバイが必要な当日の防犯カメラ映像を入手しました。その写真は、それを印刷したものです。そして、その写真に写っている女性には、入れ替わることの了承を取っています。その服も、女性から直接買い取りましたから、写真と全く同じものです」  芽衣の心臓は、激しく脈打っていた。フラグの指をどけようと思えばどけられたけど、そのまま口を開く。 「な、なんで、そ、そんな……そんなことが、出来るんですか?」 「アリバイ屋をなめちゃだめですよ。芽衣さん」  フラグは、唇に当てていた人差し指を、さらにぐいっと、押し込んできた。  芽衣は、顔が火照ってきて、さすがにフラグの指から、顔を避けた。 (乙女の唇を、なんだと心得てるの? デリカシーの欠片も無い……まったく)  フラグは、動物よりも先に、人間同士のコミュニケーションの方に関心を持って、自身の言動が異質であることを自覚しないといけない。  そんな説教をしたくなる衝動を抑えて、芽衣は、服の詰まった袋を持って立ち上がった。
/359ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加