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「明日にでもその服を着て、そこに書いてあるバーに行ってみてください。警察に聞かれても、淀みなく答えられるようにしておいてください」
芽衣は、紙が吸った湿り気を指先に感じながら、それを広げた。
そこには、バーの名前と周辺の地図が印刷されていた。最寄り駅からバーまでの道順を赤いサインペンで引いてある。赤い線の途中には、数か所、丸印がついていて、その下に時間が書いてあった。
「丸印は防犯カメラが設置してある場所で、書き込んである時間は、そのカメラにあなたが映った時間なので、大体でいいので、頭に入れておいてください」
「なるほど……。ありがとうございます。何から、なにまで準備してくださって」
芽衣は、これだけ揃っているなら、ウソのアリバイを突き通せると確信した。
会社から帰宅する途中に、芽衣が私服警官から声をかけられたのは、二週間前だった――
元カレの隆哉が起こした傷害事件について、何か知っていることが無いか聞かれた。
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