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隆哉が、路上で女性を刺した時、本当は近くにいたのだけど、それを警察に言うわけにはいかない。だから、「別れたあとのことだし、隆哉のことなんて、何も知らないわ」と答えた。
私服警官は、がっかりしたようだったけど、芽衣の言い分にも納得しているようだった。帰り際に、念のためとして、当日のアリバイを聞かれた。
迂闊だった。聞かれるまで、そんな質問がくることを考えなかったことを後悔した。咄嗟に口をついたのは、その前日の行動だった。
「その時間は確か、神社にお参りに行ってたんじゃなかったかな。思い立って、急に」
「……本当ですか?」
メモを取りながら、警官は、疑うように眉をひそめた。
「確か、そうだったような……」
「だって、その日は、どしゃ降りの雨ですよ。雨が降っているのに、急に思い立って、神社に参られたんですか? 別の日の記憶と間違えていませんか?」
芽衣は言葉に詰まった。
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