プロローグ

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 アメリカ村でのケンカは日常茶飯事なので、店主や店員たちは、まるで気にせず、見て見ぬふりをしている。ただ、買い物客は、自然と、潮が引くように、その周辺から移動した。  怒号が響き、その陰から一人、大柄の男が駆け出してきた。その男は、転びそうになりながらも、逃げるように、人ごみの方に向かって走る。  空気を切り裂く乾いた音が鳴った。  しかし、大音量で流されているリトル・リチャードの歌にかき消されて、最初のその銃声に気付く者はいない。  逃げていた大柄の男が、ハンガーラックを掴んで体勢を崩したが、それには気づいても、皆、近寄ろうとはしなかった。  江頭という大柄のその男は、後ろから左足を撃たれていた。 「なにさらすんじゃ、コラァ!」  江頭を追って出てきた坂下はそう叫んだが、それが、江頭に対してなのか、揉めている三人組に対してなのかはわからない。  三人組の男は、中国語でなにやら交わすと、一番若そうな男が再び拳銃を構え、もう一発、足を引きずって逃げている江頭に向かって発砲した。
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