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ホーホーホッホーと、どこかでキジバトが鳴く朝、芽衣の足取りは、いつになく軽やかだった。
高くそびえ立つオフィスビル。緑の多いエントランスから、中に入る。
いつもと同じビルで、いつもと同じ時間の出勤なのだけど、いつもと気分が違う。着ている服が違う。
マネキンに着せた展示であっても、昨日までの芽衣なら、まず選ばないようなコーデだった。
「おっ、芽衣ちゃん、おはよう。なんだか、いつもと雰囲気違うね」
ビルに入るなり声を掛けてきたのは、同じ取材班の田宮至だった。田宮は、三十半ばの中堅社員で、最近は、芽衣とタッグを組んで取材活動をしている。
「そう? いつもと変わんないけど」
「いやいや。今日の芽衣ちゃんは、なんだか、いつもよりあか抜けてるよ。服のせい……かな? 服のセンスが、いつもと違うような気がするんだけど……。そうか。ひょっとして、元カレのことが、吹っ切れたって感じかな?」
田宮の軽口に、芽衣はむっとする。芽衣が彼氏と、壮絶な幕切れをしたことは、社内では有名だった。
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