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「ちょっと、やめてくださいよ。そんなの、もう、とっくの昔に吹っ切れてますよ。あいつと別れたの、二カ月も前ですよ」
「そうかなぁ? つい先日まで、うじうじうじうじ、夢も希望も失った廃人みたいになってたじゃん? 覇気もないし、一緒に取材する時も、けっこう、気を使ってたんだぜ、オレ」
「そんなことないです。それは、言い過ぎです。私だって、浮き沈みはありますから、たまたま沈んでた時のことが、印象に残ってるだけでしょう?」
「あ、そう? じゃあ、そういうことにしておこうか?」
「しておくんじゃなくて、そうなんです」
「元カレのことを吹っ切れた人間が、わざわざ復縁が叶うという神社に、お参りに行くとも思えませんがね」
芽衣は、妻子持ちの田宮に、相談していて、神社に行ったことまで、伝えていた。ただし、別れた後、ひと月もの間、ずっと隆哉をつけ回していたことまでは言っていない。
そこに、芽衣の女としてのプライドの境界線があった。
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