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芽衣は、目の前の変人を眺めながら、出かかった言葉を飲み込んで、奥歯を噛みしめる。
日南から事前に聞かされていなければ、言い争いをするところだった。そうなれば、勝とうが負けようが、捨て台詞を吐いて、この事務所を出て行ったに違いない。
「本能を出すことだって、恥ずかしいことじゃ無いよ。むしろ、抑え込むのにも限界があるしね。ただ、その本能が、何に関係があるのか、ボクは、そこに興味があるんだ。考察してみると、いろんなことがわかって、とても面白いんだよ、フフフ」
笑ったフラグの口元から、インプラントのように綺麗に並んだ白い歯がのぞく。芽衣は、苦い記憶が蘇りそうで、視線を逸らした。
そして、やはり理屈っぽい男は、好きになれないと再認識する。
大概の男は目の前にある事象、今、現在抱えている課題をどうやって切り抜けるかということしか考えていない。その先にある未来や、広い世界に散らばっている難題は、考えようともせず、思考を止める。
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