雨時々桜

1/6
5人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
 この町の天気は、少し変わっている。  晴、雨、そして時々──桜の花びらが降る。  ある日、春でもないのに、どこからか桜の花びらが舞い落ちてきたのだ。  すぐやむこともあれば、一日降り続くこともあった。  国は原因の究明に乗り出したが、なぜ空から桜がこの町だけに降る理由は分からなかった。  判明したのは、桜の種類だけ。  どこにでもある、ソメイヨシノだった。  金にもならず、まぁ害もないことだし。と、研究は早々に打ち切られる。  最初は物珍しさもあって町を訪れる人もいたが、徐々に人々の関心は薄れ、いつしか当たり前のものとして、受け入れられていった。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!