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玄関扉を開けた雅美は感情のない声で「どうぞ、おあがりください」と、雨宮響子を招き入れた。ずぶ濡れの姿に眉を顰める。
雅美の落ち着き払った態度と汚物を見るような目つきが、響子の憎悪の炎に油を注いだ。汚物はあんただろう。夫を殺しておいてよくも平然としていられるなと。
スリッパに履き替えた雨宮響子は、右肩に下げたトートバックに左手を入れ、包丁の柄を固く握りしめた。雅美が背中を向けてリビングに向かう。
「しつれいします」ぼそりとつぶやき響子は、左手の包丁を右手に握りなおし、憎い女の背中に向けて包丁ごとどすんと身体をぶつけた。
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