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・ゴブリン ――小鬼――
彼らゴブリンは、平均身長は一メートル少し越える程度、コリガンよりわずかに小柄で浅黒い肌と髪を持っています。
また外見的にも、粗野でがさつなコリガンといった印象が漂います。
一応着衣の種族ですが、衣服は革や布切れを雑に継ぎ合わせたものを適当に羽織っていますが、その粗雑な風貌がさらに乱暴な雰囲気を醸し出しています。
実際、ゴブリンたちの性格は、極めて感情的で素朴です。
意地の悪い面もありますが、いわゆる邪悪とは違います。
また良きにつけ悪しきにつけ、彼らは執念深い種族です。
しつこいのと同時に、不思議な義理堅さを持っています。
その意味では、彼らは他の人類と相容れない種族ではありません。
ゴブリンたちは草原と森の境目辺りに数十人規模の集落を作っています。
住居は木や革を塗ったり縛ったりして拵えたバラックです。
集落の周りは粗末で不器用な木の柵でぐるりと囲まれていて、他の人類からもすぐにゴブリンの集落だと分かります。
彼らの生活圏はコリガンたちと重なっていて、ゴブリンとコリガンはテリトリーをめぐって衝突することもあるようです。
ゴブリンたちは他の人類と違って一妻多夫制をとっています。
一つの集落には、長でもある二、三人の母と十数人の夫たち、それに二十人ばかりの子供たちが暮らしています。
母は個人用のバラックを持っていますが、夫と子供たちは二、三家族で雑居しているようです。
ちなみに育児の七割ほどは夫の役割とされています。
彼らはわずかな耕作と野豚やニワトリの飼育、それに採集で支えられた自給自足で生活しており、コリガンとの小競り合い以外に他の人類との交流は殆どありません。集落同士との交流も極めて希薄です。
信仰はありませんが、昔話に近いかたちで『創世記』を伝えています。
ただしゴブリンたちの超自然的な事象に対する関心は、非常に強いものがあります。
一つの集落には、一人は必ず呪術師がいます。
大抵は女性で母が務めることもありますが、まれに夫の呪術師もいます。
雨ごいや生まれた子供の祝福、それに病魔の調伏などが主な役目ですが、標的に直接ダメージを与える呪術もいくつかあるようです。
ゴブリンの使う呪術は他の種族から見れば、ほとんど体系も成さない程度の低いものに映ります。
しかしそれは、ゴブリン自体の魔力と霊格が低いためで、同じ呪術をドラゴンやアールヴが行使した場合には、恐ろしいほどの効果をもたらすという説もあります。
そのせいか、ごくごくまれに、他の人類の魔術師がゴブリンの集落に入り込んでいることがあります。
その魔術師の目的は“ゴブリン呪術”の研究だと思われますが、ゴブリンは総じて純朴なので、そんな魔術師にいいように操られてしまうこともあるようです。
この“ゴブリン呪術”に関しては、また別に項目を立てられたらと思います。
【主要人物】
いわゆるモブとして『破霊の剣』に数人登場しました。
その時は蛇女の手下でしたが……。
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