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(9)デモシー ――異頑人――
『創世記』において九番目に生じた人類が、”異頑人”と呼ばれる種族です。
ここに含まれるのは、他の人類から”ミストギガント”と呼ばれる人類だけです。
身長は四メートル弱と、ほぼ平均的な人間 の倍程度と、体格的にはいわゆる巨人のテルシーに含めるのが妥当かも知れません。
しかし神話上の来歴と、生物学的な特性から、他のテルシーとは全く別種の生命体とみなされます。
彼らは紫がかった黒い肌と黒い髪、黄色い大きな両目に大きな口を持っていて、特殊な肌の色が”黒頑人”の由来となっています。
着衣は毛皮もしくは布の腰巻とチョッキ程度で、風貌は悪鬼とか人食い鬼を思わせます。
ですが知能は外見から想像されるよりは遥かに高く、類縁関係は分からないながら、ある程度体系化された独特の言語を話します。
外見もさることながら、ミストギガントと他の人類との最大の違いは、彼らの体質にあります。
彼らはどこに居ようと、常に白い息を吐いています。
これが通称“ミストギガント”の由来ですが、その息には末梢神経を麻痺させる神経毒が含まれており、大抵の生物はこれを吸い込むとほぼ瞬時に絶命します。
この神経毒はミストギガントの呼気ばかりか筋肉、内臓、血液など体組織のすべてに含まれていて、唾液や返り血を浴びたり、果ては遺体を荼毘に付した煙を被っても、命の危険があるとされています。
この毒に耐性のある生物は、同族を除いて存在しません。
彼らの特殊で危険な体質は、生活圏と食生活によるものだと云われていますが、正確なところは分かっていません。
ミストギガントの生活圏は、北大陸の環状山脈の深い谷底にあるとされています。この峡谷は常に霧がかかっていて、他の人類が踏み入ることは困難です。
さらにはミストギガントの集落は、彼らの体から排出される毒素が充満しているため、他の人類が彼らの集落に入ることはほぼ不可能とされています。
そのため、彼らの暮らしぶりや文化程度などは、全く分かっていません。
ただし、人類の中でも特に強靭な身体を持つドラゴンであれば、限られた時間ではあるものの、ミストギガントの集落に立ち入ることができる、という噂もあるようです。
その噂によれば、ミストギガントたちは意外と寂しがり屋で義理堅く、実は甘いものが大好きだとのことですが、真相は霧の中です。
【主要人物】
ギガとメガ(『破霊の剣』)
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