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・グリムロック ――洞鬼――
グリムロックは、血縁的にはゴブリンに非常に近いとされています。
草原と森の境界に生活圏を持つゴブリンですが、グリムロックは陽光の届かない深い洞穴や谷底に住んでいます。かつて何らかの事情で地表を追われたゴブリンたちが、暗闇での生活に適応して生まれた一族だとの説もありますが、実証されてはいません。というのも、グリムロックは他の人類との接触を極度に嫌うため、彼らの性質や特徴などを体系的に整理できるほどの記録が取れていないためです。
しかし冒険者や探鉱師たちが偶然に遭遇した際の断片的な記録からは、以下のような特徴が浮かび上がってきます。
グリムロックの身長は一メートル未満と、ゴブリンよりもさらに小柄です。肌は青白く、非常にやせ細っていますが、身長に比べて腕と脚がかなり長いと云われます。顔面は扁平で鼻は低く、大きな目のほとんどは青黒い瞳孔に占められています。頭髪はありません。衣服らしい衣服はなく、基本的に裸族のようです。使える道具も自然石を多少叩いて整えた程度のもので、複雑な構造物を作ることはできないとされています。ただし、それも彼らの生活圏が道具の素材となる植物のほとんどない洞窟にある場合の話らしく、切り立った峡谷の底に住むグリムロックが石器を付けた槍や櫓のような簡便な建物を作るのを見た、という目撃譚もわずかながら記録されています。
グリムロックは光の乏しい環境に適応しているため、暗視能力は非常に発達しています。また言葉を話すことはほぼ皆無で、意味のある単語の収集ができないため、グリムロックの使用言語は文字も含めて未解明のままとなっています。
しかし言葉を話さない一方で、彼らは目に見えず、耳にも聞こえない思念波によってお互いの意思を交換していると云われ、この一種のテレ・パシー能力がグリムロックの最大の特徴とされています。
彼らの思念波は、グリムロック一人ひとりでは極めて微弱なものですが、四人以上のグリムロックが集まった場合は、事情が変わります。四人以上のグリムロックが単体の標的に息を合わせて思念波を浴びせた場合、電気ショックに 似た衝撃を与えたり、幻覚や幻聴を引き起こして撃退することができる、とされています。
ただし、グリムロック自身は身体的には非常に非力で極端に憶病なため、彼らの思念波は敵対者を倒すよりも、一刻も早く立ち去らせるために使われることが多いようです。
グリムロックの社会様式は分かっていませんが、雑婚による血縁集団を基本とした部族社会を構成しているようです。食生活も基本的には採集に頼っており、洞穴に棲息している小動物や昆虫、菌類や地衣類を食べているようです。火を使っているという報告もありません。
しかしながら、峡谷に住むグリムロックの中には、植物の簡単な栽培や火の利用の目撃報告もありますが、信憑性には疑問符が付いています。
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