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翌日から結婚式までの約10日間、あたしには専属の先生がつき、「貴族らしい行儀作法」をみっちり仕込まれた。
スカートの裾をつまんで片足を斜めに引き、もう片方の膝を少し折り曲げて背筋をぴんと伸ばしたまま礼をする「カーテシー」という挨拶、ナイフとフォークを使って食事をする際のテーブルマナー、優雅で上品にみえる歩き方や座り方、そして社交ダンス……
言うまでもないことだが、あたしはこの世界の価値観やマナー、世界観に関する知識がほとんどない。
しかしあたしの教育係についた先生は、そんな事情を一顧だにしなかった。
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「はぁ〜この一杯の為に今日を生きたよ……」
「カレン様大袈裟ですよ」
寝る前のハーブティーを淹れてくれたハンナは苦笑いをしているけど、この何日かは本当に生きた心地がしなかった。
あたしに貴族の娘としてのマナーや嗜みをご教授下さってるクレア・クレメンスというシスターは、あのワガママサル姫でさえ恐れるスパルタ先生らしく、元の世界のレッスンがまるでおままごとの様に思えるほどの噂にたがわぬ鬼っぷりだった。
それでもダンスの時のウォーキングやターンは「まぁまぁね」という評価を貰ったから元の世界のレッスンも多少は役に立っていたのだけれど。
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