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いよいよ明日が結婚式という日の朝──ハンナが休暇の報告に来た。
「何処かへ遊びに行くの?」
「いえ、孤児院のみんなにお別れを言いに。」
うわぁ、能天気な質問しちゃった。やっぱりあたしのいた日本って平和だわ……
「何か、ごめんなさい。」
「いえいえ、そんなに気にしないでください。騎士さまの養女になれたお陰で娼館で客取らなくて済んだんだから私なんか恵まれてるほうです。」
「へぇ……そぉですか。」
ハンナは時折、なかなかエグいことをサラリと言ってのける。
「あ、そうだ!もし良かったら姫様も一緒に行きませんか?」
行儀作法のお稽古はもう終わってるし、異世界にいるあたしはハンナがいなければ確かに暇だ。超暇だ。
「ここにいてもやる事ないし、行く!」
あたしは即答した。
────
「ハンナおねーちゃーん!」
バスケット一杯に白パンを詰めて孤児院を訪れたハンナの姿を見て、幼児たちがわらわらと寄ってくる。
子供たちの後ろで見守る世話役の少女たち──恐らくハンナの後輩だろう──も、ハンナの元気そうな姿を見てなんだか嬉しそうだ。
「はい、みんな並んで並んでー」
ハンナの指示に従って、子供たちが1列に並ぶ。
満面の笑みを湛えた彼女はバスケットの中の白パンを取り出すと綺麗に2つに割り、半分になったパンを並んでいる子供たちに1つずつ配っていった。
子供たちと、そして後ろにいた年嵩の2人の少女にもパンを分けたがそれでも1つ余った。
「1個余ったね?」
「これは私たちの分です。」
ちょっと悪戯っぽい笑みを浮かべ、彼女は1つ残った白パンを2つに割って1つをあたしにくれた。
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