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「うーん、やっぱり小麦パンは美味しい!姫様もそう思いません?」
「うん、そうだね。」
ハンナにはそう言ったが、正直なところ「不味くはない」というくらいなレベルだ。日本に戻ればこのくらいの味のパンならコンビニでいくらでも売ってる。
でも確かに、お城で出されてたライ麦の黒パンよりは美味しかった。
「お城のパンってなんで黒パンなんだろ?」
「だってここ、寒いですし。小麦なんかほぼ採れないから普段はライ麦で黒パン作って食べるしかないんですよ。普段から小麦の白パン食べてるのは陛下とそのご家族くらいです。」
あーなるほど。 寒い国って不便だなぁ。
「あのぅ……姫様。」
「なぁに?」
「しばらく子供たちを、お願い出来ないでしょうか?私、世話役の子たちとお話が……」
「ああ、いいよ?」
その後ハンナは部屋に入っていき、あたしはしばらく子供たちの遊び相手をする事になった。
「ハンナってどんな人だったの?」
「ハンナおねーちゃんすごいんだよ!おべんきょうもできるしごはんもつくれるし、すごくやさしいし!」
ハンナについて少しだけ聞こうと思ったあたしは、瞳をキラキラさせた子供たちが我先にと喋り出し、しばらくそれは治まらなかった。
ハンナ……人望あったんだな。
生まれが生まれなら、あんなサル姫なんかよりずっといい君主様になったんじゃないだろうか。
────
「おねーちゃーん、また来てねー!」
パンを食べ、たっぷり遊んだあたし達は夕方になってようやく孤児院を後にした。
帰り際、ハンナの目に光る涙を目敏く見つけたが、あたしは何も言わなかった。
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