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黒い塊はフードを被った人の姿になったけど、明らかに人とは違っていた。
禿げた頭に赤茶けた肌、尖った耳と乱杭歯、誰がどう見てもゴブリンってやつだ…嘘でしょ?私ホントにこんなのと結婚しないといけないの?
水に浸かった時は助かりたい一心で結婚でも何でもするって言ったけどさぁ!
大体何であたしなのよ?
こんなのと結婚するくらいなら死んだほうがマシじゃない!?
そーよ!あたしだけ酷い目に合うって違くない?何で私がナボじとかサル姫の為に犠牲に何なきゃいけないのよ!?おかしくない?おかしいよね?
だんだん腹が立ってきた、もーいい、あんなのと結婚するくらいなら死んでもいい!
全部ぶちまけようと思って前に出た時ハンナの手を握っていた事に気が付いた。
……違う、ハンナは違う。
出会ってまだ10日も経ってないけど、異世界から来た私に優しくしてくれた。それに街の孤児院で会った子ども達も。
ハンナが面倒見てた孤児たちは頑張って生きてた、私が全部ぶちまけたらハンナやあの子達はどうなるの?
「大丈夫です……」
傍にいる私にしか聞こえないくらいの小さな声だったけど、ハンナの声があたしには確かに聞こえた。
「我が名はカテリーナ、スヴァール王国の王女である。さっさと魔王の城へ連れて行くがいい!」
ハンナの手を離しゴブリンに向き直った私は、自分でも信じられない程の声が出た。
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