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へぇ……中世ヨーロッパっぽい雰囲気だからかなり不便な世界かと心配してたけど、意外に便利な世界かも。
「魔石って便利なんですねー。あたしの世界にはなかったから新鮮!」
「ささ、明日は姫様に謁見するので身体をお清め下さい。お話の続きは湯浴みをしながらにしましょう。お背中、流します。」
豪奢なドアを開け、ハンナさんはあたしをお風呂に誘導した。
ああ……いい香り……
薔薇の香りのする石鹸は泡立ちも良く、石造りのバスタブにはたっぷりのお湯が張られている。しかも香りのいい花びらが浮かんでいてとても気持ちよさそうだ。
この世界に来てあたしは初めて幸せを感じていた。
「ところで魔石って、どっかで取れるの?金とか宝石みたいに。」
「それがですねー」
古代ローマの浴場を思わせる大きなお風呂であたしの背中を流しながら、ハンナさんは言いにくそうに続けた。
「魔石って、その性質上『魔疽』というエネルギーを常に出してて、少しなら問題ないんですが、あまり多いと作物とか育たなくなるんです。」
「ふむふむ。」
「それで、魔石のある場所にはそもそも人住んでなくて、その……お姫様の嫁ぎ先である魔王様のお城のある山で採れるんです。」
「ちょっと待った!」
聞き捨てならないセリフをサラリと言われ、あたしは慌ててハンナさんに待ったをかけた。
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