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翌日── とりあえず最低限の身なりを整えたあたしは、ハンナさんと護衛(監視役?)の騎士を伴って宮殿へ出向いた。
「ここは、雪華宮という名前で知られる王宮です。綺麗でしょう?」
ロココ様式のゴージャスな門をくぐり、天使の彫像が鎮座する噴水付きの広い庭の先に白亜の宮殿が見える。
確かにとっても綺麗だが、そんなものに感動するような心の余裕はあたしにはなかった。
「ようこそ、姫様。こちらへどうぞ。」
宮殿の入口にはあたしを水牢に漬けた魔法使いのナボコフが待っていて、満面の笑みであたし達を出迎えた。
言葉では姫とか言ってるが、あたしの事を姫様だなんてこれっぽっちも思ってないだろうけど。
この陽気な陰険ジジイのあとから長い廊下を歩き、白塗りの大きな扉の前に立つと後ろに控えていたハンナがスススッと前に出てジジイの替わりにノックをした。
「ナボコフです、娘を連れて参りました」
「入れ」
ん、お姫様の部屋じゃなかった?聞こえたのは男の人の声だったけど?
ハンナさんが扉を開け、ナボじいに引っ張られてあたしが部屋に入るとデカいカウチソファに寝そべるように座っていた女の子がゆっくり体を起こした。
「無礼者!頭が高い!」
側に立っていた黒スーツのイケメンが怒鳴ったので慌ててオジギをした、ヤバイヤバイ、こいつら人の事を人間って思ってない連中だった。
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