45人が本棚に入れています
本棚に追加
「しかしだなナボコフ、妾に比べてこれほど見劣りする者を送るのは我が国の威信に関わらぬか?」
あたしが?この女より?見劣り──だとぉ!?
一体どの立場から言ってんだ?鏡見ろ!──と叫びたい気持ちを、あたしは賢明にも堪えた。
「大丈夫です。というか、これでもこのナボコフ、殿下の代わりになりそうな異国の女を懸命に探して参りました。似てないからといってまさか殿下に行っていただくわけにも行かず……」
「むぅ。」
苦肉の策です、どうかお許しを── 声を詰まらせ、涙ながらに平身低頭するタヌキ親父ナボじいの訴えに、ワガママで現実が見えてないお姫様も流石に黙り込んだ。
あたしには、「ダメならカテリーナ姫が自分で行くしかない。」というナボじいの脅しにしか見えなかったがそれだけに効果はテキメンだった。
「国民の中に妾に似た者はおらんのか?」
しばらく考えたカテリーナ姫さまは、なおも食い下がった。
自分とこの国民を犠牲にするとはなかなか外道な姫様である。
「百姓娘では肌や髪の色艶があまりに違いますし、まさか貴族の娘を攫うわけにもいきません。」
ナボじいの反論に、ようやくカテリーナ姫は納得のため息を吐いた。
うわぁ、ダメだこの宮廷。
王侯貴族以外を完全に虫ケラ扱いにしているそのやり取りに、あたしは反吐が出そうだった。
最初のコメントを投稿しよう!