XIII 夜明け

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そこへ、マンチャに野菜の葉を食べさせ終えたアウローラが戻ってきた。彼女の背丈では包みの中は見えないが、顔を伏せたシモンの表情なら見えてしまう。 「どうしたの?」 「……大した事じゃないさ。おいで、オレたちのアウローラ( 夜明け )」 ホセは表情を歪め、無理やり笑顔を作ると、片手で娘を抱き上げた。 そして、もう片方の腕で弟分を抱き寄せる。五年前より背が伸びたシモンは、兄の胸ではなく、肩に顔を埋める形になった。 「やっぱりあいつは……何をするにも早すぎるんだ」 それが、シモンにかけられた唯一の慰めだった。 思い通りにならなかったと言って泣く事が許されていたのは、〈おちびさん〉と呼ばれた少年の頃までだからだ。 ガラノスを発展に導いた人物を失った当時の人々の悲しみは、見送りから五年が経った今でもよく憶えている。 彼は英雄扱いされる事も、また愛する故郷の人々を悲しませる事も望んではいなかった。だからこそ、これらは家族の元ではなく、シモンに託されたのだろう。 世界を相手取る一人の男へと成長したシモンには、起きてしまった出来事をただ受け入れるよりほかない。 アウローラが小さな手を伸ばし、シモンの金髪の頭を撫でる。 彼女は、夜明けを見ずに旅立ったその顔を知らない。
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