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 麗かな初夏の日射しあふれる休日の昼下がり。赤星家の門の前に白いプリウスが止まった。  運転席から、飾り気のない黒いパンツスーツに身を包んだ女性が降り立ち、煤けたブロック塀越しに年季の入った一軒家を見上げる。伸び放題の庭木は陰鬱な影を作り、煤けた外壁は家主の心理状態を映したようだ。  しばらく眺めていた女性は、フッと口元に笑みを浮かべ、カメラの付いていない古いタイプの呼び鈴を押した。 「お約束しておりました『ヨリソイの会』の姫野です」 「ああ、どうも……お待ちしていました」  門扉の奥、ガタガタと格子の引き戸を開けて顔を出したのは、パーマも緩んだ年配の女性だった。くたびれたブラウスの袖をまくるのか下げるのか忙しなくいじりながら、おどおどと頭を下げる。 「赤星様の……奥様でいらっしゃいますね」  姫野と名乗った女性はニコリと微笑み、手にしていた名刺を差し出した。    引きこもり専門相談『ヨリソイの会』     相談員 姫野 すがる 「……はぁ」  赤星の妻は、恐る恐る名刺を受け取ると、どうぞ中へと姫野を(いざな)った。  薄暗い玄関に入った姫野は、キョロキョロと辺りを見回す。 「篤史(あつし)さんは、どちらですか?」  びくりと肩を震わせた赤星の妻は、廊下の奥に目を遣った。 「に……2階におります」  玄関先の気配を察してか、奥から、これまた疲れた様子の初老の男性が現れた。ここの家主、赤星だ。外は暖かな日差しにあふれていというのに、毛玉の目立つ厚手のグレーのカーディガンを着こんでいる。ぎこちなく腰をかがめて白髪頭を下げた。 「この度は……御足労いただきまして……」 「お話は伺っております。早速、篤史さんと接触させていただけませんか」  姫野は赤星夫妻に柔らかい笑みを向けた。
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