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「さっきの彼氏出来たらって話だけど」
急に話を蒸し返されてドキッとしてしまった。
嵐士とはいつもふざけているから、こうして真剣な切り出し方をされると戸惑う。
「俺は嫌だよ」
月明かりは眩しいくらいに照らしているのに、嵐士の表情が見えなくて変に心臓がざわつく。
「今日秋生先輩に宣戦布告されたんだよね」
「宣戦布告?」
「”僕は木綿子ちゃんのことが好きだから”だって」
まさかそんなことになっているとは知らなかった。
ってことは、さっき車で質問された時も、本当は嵐士は真相を知っていたことになるじゃないか。つくづく食えない男だ。
「木綿子は秋生先輩と付き合うの?」
「それ…は、まだわかんないけど…」
正直、あたしは迷っていた。
幸せになれるという確信はあるのだけど、どうしても二つ返事で「はい」と言えなかった。
秋生先輩のことは好きだ。
でもそれはあくまで"推し"であって、今まで男性として見てこなかったから、告白にだって驚いた。そんなすぐに答えは出せない。
「ねぇ、木綿子。先輩と付き合う前に俺とセックスしようよ」
「……は?」
ふいに腰に手を回され、一気に嵐士の綺麗な顔が近づく。
あまりに突然の出来事に一瞬固まってしまって反応が鈍る。
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