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こんな天気のいい日に、どうしてコンクリートの中で学業に励まなきゃいけないのか、そう思ってしまうような、雲ひとつない快晴が広がる昼下がり。
「嵐士くんのことが好きなの…」
目の前には、肌が透き通るほど白くて、今にもその大きな瞳から零れ落ちそうな涙を浮かべている美女。
白昼堂々繰り広げられている告白に、みんな視線を向けては過ぎ去っていく。
「う~ん、困ったなぁ」
当事者は首の後ろを掻きながら、少しだけ困ったように微笑んでいる。
この龍ヶ谷嵐士という男はそれはそれは女の子からモテる。
持ち前のルックスと長身。
一度聞いたら耳の奥に残る、耳障りのいい声色。
同い年と思えないくらいに大人びていると思えば、ちゃんと童心も持ち合わせている事を知らしめるような、笑った時にだけ覗く可愛らしい八重歯。
女の子の扱いに長けていることに加え、誰もが心地よくなるように考え尽くされた言葉の巧みさ。
"神様はニブツを与えない"なんてよくいうけど、あれは嘘だと彼が証明している。
一度関わってしまえばどんな女の子でも好きになってしまうそんな男。
ただひとつの難点を除けば……。
「俺好きな子いるから”体の関係だけならいいよ”ってはじめに言ったよね?」
そう。この男はこういう男なのだ。
とんでもなくふしだらで、ワタリドリのように女を渡り歩くような、自他ともに認めるほどの所謂"ヤリ○ン"だ。申し訳なさそうな声色でとんでもない事を言ってのける。
それでもいい!と最初は言っていても、最終的にはこうなる。こんな状況慣れっこなのだ。
「私じゃ……、だめ?」
瞳を潤ませながら、名前も知らない美女は嵐士を見つめる。
あたしが男だったら、こんな風に言われたら断れる気がしないのに。
――ところで、あたしの姿見えてないんですかね?
あたしはただ教室に向かう途中で、嵐士といっしょに移動していただけなのだけど、この突然の白昼堂々の告白タイムに巻き込まれていたりするんですが?
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