28 竜王様の過去

4/8
前へ
/234ページ
次へ
 きっと私の顔は真っ赤だ。耳まで熱くなって、頭も真っ白で何も考えられない。でもこのままじゃエスカレートしていくばかりなので、私は勇気を出して彼の名を叫んだ。 「リュ、リュディカ! からかうのは、止めてください!」 「…………」  あれ? せっかく頑張って言ったのに、反応なし? 私は恥ずかしくてギュッと閉じていた目を開けた。するとそこに見えたのは。  真っ赤な顔をした竜王様だ。口に手を当て、うつむいている。耳まで真っ赤になって、私と一緒じゃない! 「竜王様、顔が真っ赤ですけど?」 「……驚いただけだ」 「絶対ウソです! もう早くどいてください! からかってばかりなんだから!」 「からかってるわけじゃ――」  このままじゃ不毛なやり取りになりそうだと思った瞬間、コンコンコンと怒ったようなノック音が聞こえてきた。 「竜王様、お茶を飲む時間です!」  扉の外からリディアさんの不思議な声掛けが聞こえてきた。 (薬を飲む時間みたいな言い方してる……) 竜王様も彼女の言葉を聞き、私の上から体をどけると、何事もなかったかのように出ていこうとしている。 「じゃあ、リコ。また明日だな。ゆっくり休めよ」 「は、はあ……、おやすみなさい」  来た時とは違ってかなりご機嫌な竜王様は、睨むリディアさんのことも軽くあしらいながら、自分の部屋に帰って行った。 「ゆっくり休めって、あんなからかい方して、よく言うよ……」  ベッドに寝転がりながら、竜王様に悪態をついていると、大事なことを思い出した。 「あっ! 結局言えなかった!」  自分が運命の花嫁だって告白しようとした瞬間にアレだもん。一気に頭が真っ白になって、すっかり忘れてしまった。卵くんも寝ちゃったし、今日はもういい、ふて寝しよう。
/234ページ

最初のコメントを投稿しよう!

505人が本棚に入れています
本棚に追加