28 竜王様の過去

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 団長さんたちの話によると、幼竜を育てるのは竜に慣れている騎士団でも大変で、出産シーズンになると各地の騎士たちが愚痴をこぼすほどだそう。なので保育園の話を聞いたら、問い合わせが殺到するとまで言われてしまった。 「ヒューゴも手伝うと言ってくれてますし、さっそく帰りは彼の背中にクルルを乗せましょう」  竜王様の気がすごいので、クルルは私たちと一緒にはいられない。なので穏やかな気質のヒューゴくんと鎖でつないで、背中に乗せてもらうことになった。 『リコ様、この子はしばらく僕が面倒を見ますね』 「いいの? 無理してない?」 『誰かの世話をするのは、嫌いじゃないです。それにこの子も、僕に懐いたみたいで』  最初はおびえていたが、どうやら二頭は波長が合うようだ。クルルはヒューゴくんの背中に顔を擦り付け、甘えている。 「親だと思ったのかな?」 『もしかしたら、本当の家族にも、似た性格の兄竜がいたのかもしれません』  その様子を隣で見ていたルシアンさんも、ホッとした様子だ。「これなら大丈夫そうですね」と言ってほほ笑んでいる。 「迷い人リコ様、また会える日を楽しみにしていますよ」 「ルシアンさん、お世話になりました! クルルは大事に育てますね!」 『ばいば〜い』  クルルという思わぬお土産をもらい、私たちは順調に王宮まで戻っていった。トラブルといえば、途中クルルが眠ってしまって、ヒューゴくんの背中から落ちてしまい、鎖で宙ぶらりんになってしまったことくらいだろう。 「この世界で初めての旅は楽しかったか?」 「はい! 竜も性格がさまざまで、面白かったです」 「フッ、そうだな。お、そろそろ王宮だ。どうやら出発と同じで、騎士たちが出迎えてくれてるようだぞ」 「わっ! 本当だ! キールくんもいる」 『りゅうのけはい、いっぱい』
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