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窓からのぞくと、たくさんの騎士や王宮のスタッフが出迎えてくれていた。手を振ってくれたり、キールくんなんてこっちに飛び出しこようとするのを、三人がかりで止められていた。
「竜王様、お戻りお待ちしておりました。おや? ヒューゴの背中に知らない幼竜が乗っていますね。どうしたのです?」
「実は面白いことがあってな――」
竜王様が私が幼竜と話せること、王宮に竜の保育園を作ることを皆に伝えると、わあ!と大きな歓声があがった。
「それは凄い! 騎士の仕事がだいぶラクになりますよ!」
「もうすぐ出産シーズンですから、すぐに取り掛かりましょう!」
「リコ様がこの国に来てくださって、本当に良かった!」
(嬉しい……、みんな喜んでくれてる! これならタイミングを見て、竜王様に告白できそう!)
そう思うと、すぐに胸がバクバクと緊張してくる。いつ言おうか? 今日はまだちょっと心の準備ができてないから、明日にしようかな。そんなことを思っていると、遠くから竜王様を呼ぶ声が聞こえてきた。
「きゃっ! 誰?」
「どけてくれ! 私を誰だと思ってるんだ!」
すると一人の知らない男性が、騒ぐ群衆を強引にかき分け、竜王様の前にひざまずいた。
「竜王様、お帰り大変お待ちしておりました!」
「リプソン侯爵ではないか。そんなにあわてて、どうしたのだ」
(リプソン侯爵……ということは、この人がアビゲイル様のお父さん?)
「お妃様選定の水晶が完全に灯りました! よって明日の朝、水晶の部屋にて、お妃様選定の儀を執り行います!」
そう言って、リプソン侯爵は顔を上げ、私に向かってニヤリと笑った。
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