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「卵くん、寝ちゃったの?」
昨日あたりから卵くんの寝る時間が、多くなっている気がするけど大丈夫かな。まあ、でも卵くんに頼るのも違うよね。私はお腹をさすっていた手を離し、パンと頬を叩き気合いを入れた。
「自分で決めなきゃ……!」
私の悪い癖だ。揉め事が苦手で、どうしても強く言えない。パニックになって、言葉が出てこないのだ。それで我慢してきたことばかりだったのに。
「よし! 明日、無理やり行って、私も選定を受けさせてもらおう!」
場所も時間も選定を受ける者にしか、教えてもらえないから、明日リディアさんに言ってみよう。そう決めたのなら、早く寝ないといけない。儀式は朝からだ。私はまだ眠くない目をぎゅっと瞑り、毛布をかぶった。
「目の下のクマがすごい!」
あれから何度も夜中に起きてしまい、結局寝不足だ。そんな顔色の悪さを鏡で確かめていると、少しあせったようなノック音が部屋に響いた。
「リディアです。入室してもよろしいでしょうか?」
「えっ? はい! どうぞ!」
部屋に入ってきたリディアさんは、急ぎ足で私のほうに歩いていくる。なんだか様子がおかしい。リディアさんの目が、いつになく真剣で、手が震えている。
「竜王様がお呼びです。リコにお妃様選定の儀に、来てほしいと言っています」
「えっ? もう始まってるのですか?」
ようやく朝日が見えてきたという時間なのに、神聖な儀式だからか、かなり早かったようだ。
「わかりました。行きます!」
結局卵くんの声はあれから聞こえないけど、私は行ってきますの挨拶をするように、ポンとお腹を叩いた。
(なにがどうなってるのか、全くわからないけど、ちょうどいいわ! 私にも選定の儀を受けさせてもらおう!)
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