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助けに来てくれた人がいるだけで、希望が湧いてくる。私はなんとか立ち上がり、ヨロヨロと部屋の扉まで歩いて行った。しかしその間も私のお腹はポコンと中から蹴られるように動いている。さっきよりは落ち着いているけど、やはりこの異常な出来事が夢じゃないのを表していて、ものすごく怖い。
「リディアさん! た、助けてくださ……」
この状況を見ればお医者さんが診てくれるはず。ここは日本じゃないから、私の知らない病気なだけですぐに治療してくれるかもしれない。私はようやく扉までたどり着き、震える手でドアノブに手をかけた。
その時だった。私はある大事なことを思い出した。昨日聞いたあのこと。私には関係ないことだと考えていた、あの話。状況がピタリと当てはまっているように思えて、私は自分のお腹を見つめた。
(も、もしかしてこれって……)
私はそのポコポコと動き続けるお腹にそっと手を当てる。すると今まで縦横無尽に動き回っていたお腹の動きが、ピタリと止まった。
「竜王の卵……?」
そうつぶやくと、お腹が嬉しそうにポコンと跳ねた。
『そうだよ! だからママ、今からパパと結婚してよ! ボク早くお腹から出て、空を飛びたいんだ!』
「ケ、ケッコ……えっ……?」
『ママはボクが選んだパパの運命の花嫁なの! 早くパパと結婚して!』
「ウ、ウンメイノ、ハナヨメ……ケ、ケッコン……」
ドアの外からはリディアさんの「リコ! 返事をしてください!」と心配する声が聞こえる。それなのにパニック状態の私は返事することすらできない。
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