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02 竜王のいる異世界
「きゃあっ!」
ドスンという音とともに、私の体が床に転がった。バランスを崩して倒れたからか、頭を強く打ち、目の前がクラクラする。周囲からはたくさんの女性の叫び声や、男性の怒鳴り声が響いていて騒がしい。
「何者だ! 衛兵! 今すぐこの者を捕らえよ!」
(あれ? なにこれ? 私、普通に歩いてただけなのに、転んじゃったの? それにさっきまで人通りが少なかったのに、たくさん人がいるみたい)
「痛たたた……」
「動くな!」
痛む頭に手を当て起き上がろうとした瞬間、突然後ろから背中を突き飛ばされ、抑え込まれる。いつの間にか私の周りを取り囲むように人が立っていて、目の前にはギラリと光る剣の切っ先が見えた。少しでも動けば瞬時に切られるだろう距離にある剣に、思わず喉がひゅっと鳴った。
「ちょ、ちょっと待ってくださ――」
「喋るな! 竜王様の御前だぞ!」
「ぐっ!」
ほんの少し顔を上げ口を開いただけで、私は頭をわしづかみにされ、床に押さえつけられる。かなり乱暴にされたので、顔はジンジンと痛み、舌が少し切れてしまった。口の中に広がる血の味が、少しずつ現実で大変なことが起こっていることを実感させ始める。
(な、なんなのこれ? りゅ、りゅうおうって何?)
「一体この女はどこからやってきたのだ!」
「おまえら警備はしっかりやっていたのか!」
「しかしこの者は突然竜王様の前に現れたように見えました! 何か得体のしれない術を使ったのでは?」
「何! 魔術師だと!」
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