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竜王様の体がピクリと動いた。
「幼い頃に両親が亡くなって、施設に入ってました。母の親戚に引き取られたのですが、うまくいかなくて。その後も住む場所が何回も変わったんです」
竜王様は前を真っすぐ見て黙って聞いていたが、急に私のほうを振り返り、ぼそりと呟いた。
『その家族に暴力をふるわれたのか?』
「いいえ! そんなことはなかったのですが、ただ、私のことを邪魔だと思っているのはわかりました。だからせめて役に立たなきゃと思って、家事を全部やってたんです」
結局は媚を売っていたようなものだ。感謝の気持ちからというより、気に入ってもらいたくて料理や掃除を引き受けていた。今と同じ。私は善良な人間ですとアピールするために、雑用をこなしていた。
「だから私、自分が邪魔な存在っていうのに慣れてるんです」
一緒にいるのにどこにも属していない寂しさは、一人でいるよりも孤独だった。どんなに同じ場所で楽しそうに笑う人たちがいても、私のまわりに透明な壁があるみたいで、決してそこに混ざることはできない。
「だから成長するにつれ、家族が欲しいなって思ったんです。私だけの家族が……」
安易な考えかもしれないけど、自分の居場所がほしかった。でも今から考えると、子供のことばかりで、夫になる人のイメージがまったく無かったけど。
「それで、まず子供たちの世話ができれば、良いお母さんになれるんじゃないかな? と保育の勉強を始めたんですけど。両親が残した遺産を、伯父に使い込まれてしまって。それで学校に入るために働いていたのですが……」
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