10 夜の訪問者

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『そのまま、仕事中に、この世界に飛ばされたってわけか』 「はい……」  働いて少しはお金が貯まっていたところだったけど、あれはどうなっちゃうのかな? せっかく一生懸命働いたのにもったいない。そんなことを考えていると、竜王様が顎に小さな手を当てて「ふむ」と呟いた。 『この王宮には、保育が必要な子供や赤子がいないからな……。それに、いたとしても竜人以外に自分の子供を預けないだろう。残るは学校の教師だが……』 「うっ……せめて、字が読めれば良かったのですが」 『それが問題だろうな』  そうだよね。この階級意識がはっきりしている貴族社会で、私が竜人の子供に関われることはないだろう。子供好きだから、保育の仕事ができないのは悲しいけど、しょうがない。 (はあ、でも落ち込むな〜……)  頭では理解できても、心がついていかない。自然と気持ちが落ち込み、うつむいてしまった。するとそんな様子を見た竜王様が、私の肩にぴょんと飛び乗ってきた。 『それでも、この国でリコがしたいことができるよう、考えていくから安心しろ』 「……いいんですか?」 『ああ、おまえはもう、この国の国民だからな。俺がやらないといけないことだ』  この国の国民……。そっか。日本に帰れないなら、私はもうこの国の一人なんだよね。そうはっきり言われると、自分の居場所が決まったようで、心の奥がじんと温かくなった。 『大丈夫だ。きっとリコのやりたい事は見つかる』
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