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それにあの優しさは、私の生い立ちへの同情心からだ。どこかで見たことがあるあの表情は、捨てられたかわいそうな子犬を見ているのと同じもの。
私が半ば自分に言い聞かせるようにそう考えていると、このドキドキのきっかけになった「リュディカ」が目に入った。もうほとんど飲み終わっているけど、カップの底にはあの黄金色の液体がゆらゆらと輝いている。
「片付けて、もう寝よう……」
ぼうっとしていると、また動悸が激しくなりそう。私はさっさとティーセットを片付け、夜着に着替えると、ベッドに横たわった。
(それにしても今日はいろんなことがあったな……)
竜王様とお話しして、大きな竜の姿も見た。そのあとは食堂で働いて、そうそう、ギークという騎士に嫌がらせも受けたっけ。さっきの竜王様とのやり取りですっかり忘れていたけど、明日からはまた彼に気をつけなきゃ。
「竜王様の運命の花嫁、か……」
未来の竜王である自分の子供に選ばれる、たった一人の女性。どんな人が選ばれるのか知らないけれど、きっとすべての竜人女性たちが納得する人なんだろうな。
(まあ、私には関係ない話だけど……)
でも早くお妃様が決まってくれれば、私への非難は少なくなるだろう。国中がお祝いムードになって、きっとその話題で持ちきりだ。
(早くお妃様が決まりますように……)
そんなことを思いながら、あっという間に眠りについた。そして、今。
私はパンパンと頬を叩かれている。
「リコ! リコ! しっかりしてください! 誰か! シリル様を呼んでもらえますか?」
「う、ううん……」
「リコ! 目覚めたのですね! いったい、どうしたのですか?」
「え……っと、さっき……」
そうだ! さっき私のお腹に「竜王の卵」だっていう声が聞こえてきて――
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