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(って、そんなこと言えるわけない! 言ったら最後、絶対に殺される!)
それにあの声は私の幻聴だったのかも。ううん、実はあれは夢で、寝ぼけてパニックになったんだ! そうに違いないわ!
『ママ? 大丈夫? 転んだの? 痛い?』
「うわ!」
私が大声で叫んで起き上がったせいで、リディアさんが心配そうに私を見ている。しかしその間もお腹からは『ねえ、ママ、どうしたの?』と不安そうな声が耳に届いてきた。
「あ、あの、と、鳥です! 窓を開けたら鳥が入ってきて! しかもその鳥が私を襲ってきたので、すべって転んだみたいです!」
「そうなんですか?」
『そうなの?』
私の言葉にリディアさんと、子供の声が同時に返ってきた。
(あなたは返事しなくていいんだけど……)
「とにかく気を失っていたのですから、お医者様を呼んできます。その前にベッドで横になりましょう」
「は、はい……」
『ママ〜! 僕の声にもお返事して〜!』
返事をしない私に抗議するように、ぽこっとお腹が盛り上がる。とっさにお腹を隠したので、リディアさんには気付かれないですんだけど、これは本当にヤバいのでは? リディアさんに支えられ、ベッドに横になってからも、お腹からのクレームは続いて止むことがない。
『むう……、早くパパに会いに行けばいいのに』
『結婚はいつするの?』
『早くお空を飛びた〜い!』
『ねえ、ママ聞いてる?』
うう、頭が痛い。これは本当に幻聴じゃないのだろうか? それにこのお腹にいる子供が本当に「竜王の卵」だとしたら、私はもしかして――!
重要なことを考えたくないあまり、頭を抱えてしまう。するとリディアさんが急いで冷たいタオルを私の額に当ててくれた。私の顔をのぞき込み、心配そうに立ち上がる。
「それでは、私はすぐにお医者様を呼んできますから」
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