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「あ……えっと……」
『やっぱり産みたくない? 僕、いらない子?』
「…………っ!」
(そ、そんな直球な質問は無しだよ〜)
もともと子供が大好きな私だ。その涙声に胸の奥がきゅうっと切なくなって、私まで泣きそうになってくる。早く間違ってるって伝えてあげよう。そうすれば本当に大切にしてくれるママの元に行けるだろう。私はそっとお腹をなで、なるべく優しい声を出して話しかけた。
「そういうわけじゃなくてね、あなたがお腹の中に入る人を間違えたんじゃないかなって思ってるの。だからあなたの本当のママは別の所に――」
『間違えてないよ? だって神様と決めたから』
「か、神様?」
『そう、神様がママを指差して、あの子はどう? って聞いてきたの』
「そ、そうなの?」
日本でも不思議な話として、「空からママを見てた」と言う子をテレビで見たことはあった。しかしこの子はそのうえ、神様と一緒だったとは。でもなんで神様は異世界の私に目をつけて、しかも竜王様のお妃にしようと思ったのだろう。それにこの子もどうして……。
(もしかして、断れなかった……?)
偉い神様に勧められて、きっと嫌だとは言えなかったのかもしれない。今からでも戻れるなら、母親が自分を拒絶する良くない人だと伝えて、ママを変えてもらえないだろうか? だってこの国で私が母親だなんて、茨の道だよ。きっと平民から生まれた子だと差別されるだろう。
私はスリスリと慰めるようにお腹をなで、また竜王の卵に話しかけた。
「なんで私をママにしようと思ったの? 神様に言われて断れなかったのなら、もう一度……」
『だってママ、家族が欲しかったんでしょ?』
「えっ……」
『僕、ずっと見てたよ。さみしいって泣いてたでしょ? だから僕がママの家族になってあげようって決めたの!』
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