11 竜王の卵との話し合い

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 その思いもよらない言葉は、私の心に直接入ってきた。一気になんとも言えない感情があふれ出し、目の奥が熱くなってくる。 (どうしよう……泣きそう……)  竜王の卵である彼からは、私のことが大好きだという感情がいっぱい伝わってくる。そのあともお腹から、嬉しそうに話す声が聞こえてきて、私は止めることができない。 『ママ、子供たちと一緒に遊んでたでしょ? 僕も一緒にママと遊びたかったのに!』 『あとね、ママよく疲れて、机で寝てた! ちゃんとベッドで寝なきゃだめ〜』  子供なんだか、お母さんなんだか、わからないようなことを言っていて、思わず笑ってしまう。しかし続けて聞こえてきた言葉に、私はお腹をなでていた手がピタリと止まった。 『だから神様と相談して、こっちにママを呼び寄せたの』 「えっ! そうなの? か、神様が? 私を?」 『うん!』  驚く情報がずっと続くと、逆に頭が冷静になってくるみたいだ。神様が私を呼び寄せたということを聞いても、「それなら時と場所を選んでほしかった……」という愚痴しか、頭に浮かんでこない。 (はあ……認めたくないけど、もうこの子に情が湧いてきちゃった)  だってこの子は私を選んでくれている。あの淋しかった日々を見て、私の家族になりたいって望んでくれているんだ。それを「いらない」なんて突っぱねることは、私にはできそうにない。でも竜王様のお妃になれるとも思えないし……。 「あっ! そうだ! あなたをこっそり産んで、一人で育てるってのはどうだろう?」 『その前にパパと結婚しなきゃ、僕を産めないよ?』 「そ、そうだったわね!」  私ったらもう妊娠してるような気になってた。そうよね。この子を本当に産むなら、竜王様と結婚して、その……初夜を迎えないといけないんだった。
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