11 竜王の卵との話し合い

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『それにパパがかわいそうだよ。僕もパパと一緒に暮らしたいし……』 「ご、ごめんなさい! 私ったらつい自分のことばっかり……!」  まだ生まれてもいない子にたしなめられてしまって、恥ずかしい。この時点で親の資格無しって感じだ。それでも竜王の卵は、私の情けない姿を見ても機嫌が良いらしく、鼻歌を歌っている。 『ママ〜ぼくのママ〜早く産んで〜』 「…………」  やっぱり正直に私の気持ちと状況を話して、一度神様のもとに帰ってもらうのが、この子にとって一番良いんじゃないかな? そう思って口を開きかけた時だった。  廊下のほうから、ドタドタと急いでこちらに向かってくる足音が聞こえてくる。それも一人じゃない。きっとリディアさんがお医者さんを連れて来てくれたのだろう。 「ヤバい! お医者さんが来ちゃう!」 『おいしゃさん?』  とにかくこの子との話し合いはまた今度だ。私はお腹をポンポンと優しく叩くと、竜王の卵に呼びかけた。 「今から人が来るけど、絶対に声を出したり、お腹をポコポコしちゃダメよ! わかった?」 『……は〜い』  ちょっと不服そうな声だったけど、言うことを聞いてくれるみたいで一安心だ。お医者さんの前でお腹が波打ったら、絶対に問い詰められて、竜王の卵だとバレてしまう。この子には悪いけど、まだ心の準備もこれからの対策も無いのだから、隠しておかなくては! (とりあえず、元気なところを見せて、お医者さんにはすぐ帰ってもらおう!)  もう目の前まで足音が迫ってきた。私は急いで背中にクッションを置くと、起き上がった体勢でドアが開くのを待った。 「リコ! 大丈夫か!」  バンと勢いよくドアが開く。一番最初に部屋に入ってきたのは、なんと竜王様だった。そしてその声が聞こえたと同時に、お腹がポコンと大きく跳ね上がる。 『あっ! パパだ〜!』 (や、約束がちがーう!)  私はあわててお腹を押さえ、勢いよく毛布をかぶった。
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