12 ドタバタの健康診断

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 そういう時はおでこにしてほしいけど、竜人は頬で調べるのかもしれない。きっとそうだ。それなのに、なぜか竜王様は頬に当てている手を、なかなか離さない。それどころか、そのまま耳のあたりの髪をゆっくり手でかきあげ始める。  竜王様の少し冷たい手が、私の首筋に届いた。そのまま、するりと指先がうなじをさわり、私は息を止める。 「……っ!」 (熱はないのに、むしろこれで上がりそう!) 「竜王様、リコをお医者様に診せたいのですが」 「ああ、そうだな」  リディアさんのナイスアシストのおかげで、なんとか変な声を出さずにすんだ。竜王様はからかってるわけでもなく、真剣に私を心配してるだけ。一人でジタバタしてるほうが恥ずかしい。 『ママ、なんでドキドキしてるの? 体がぬくぬくしてきた〜』  もう私の返事がなくても勝手に喋ることにしたのだろう。お腹にいる卵くんは、楽しそうに話している。私が注意するように、そっとお腹を叩くと、『ふふふ。動かないから、だいじょうぶ!』と笑っていた。 (本当に大丈夫かな? わざとバラすように動いたらどうしよう!)  しかしその心配は現実にならず、意外にも卵くんはお医者様の診察が始まったとたん、何も反応しなくなった。声も出さずにじっとしている。 「頭にコブもできてませんし、脈も正常ですな。一時的に気を失っただけだと思いますが、念の為、今日一日は安静にしてください」 「はい、わかりました」
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