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「おまえ、どこから来た? 名はなんと言う?」
ぞくりとするその声に、肩が勝手に跳ねる。
(怖い……! 何でも正直に答えるから! どうか神様! いるなら私を助けてください!)
それなのに緊張からか唇が乾いてくっついてしまい、声が出てこない。竜王の質問を無視していると思われたら大変だ。私はなんとか唇を舌で湿らせると、慌てて口を開いた。
「た、橘莉子です。日本の東京から来ました! こ、ここは一体、どこなんでしょうか?」
「おい! 聞かれたことだけを話せ! 竜王様に余計な口を聞くな! 生意気な女め!」
「うっ!」
髪の毛をぐっと後ろに引っ張られ、頭皮に強烈な痛みが走る。ブチブチと髪の毛が引きちぎられる音が聞こえ、私の瞳からは我慢していた涙が一粒こぼれ、うめき声が漏れた。
(もう嫌! 帰りたい! 私がなにしたって言うのよ……)
私の無抵抗な様子に気を許してくれたのかもしれない。竜王はため息をつくと、抑え込んでいる騎士に向かって追い払うように片手を振り、私から離れるよう促した。
「もうよい。手荒な真似はするな」
「し、しかし、この女のせいで、我が妹達が……」
「そのことは後でまた場を設ける。今は下がれ」
「……は、はい。竜王様」
「拘束を解け。女、手荒な真似はしないが、おまえが妙な動きをしたらすぐに殺す。わかったな」
コクコクと無言でうなずくと、すぐに私を取り押さえていた手が離れた。呼吸ができない苦しさから解放され、私は大きく深呼吸をする。それでもまだ手の震えは止まらず、私はきゅっと自分の手を握り、前を向いた。
「立て」
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